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入国管理・国籍等の判例・裁判例紹介のコーナーです。
これが全てというわけではないのは言うまでもありませんが、判例や裁判所というものがどういうものか、の一端を知る参考です。

憲法82条
1項 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。


判例 平成14年11月22日 第二小法廷判決
平成10年(オ)第2190号 国籍確認等請求事件
要旨:
 国籍法2条1号は憲法14条1項に違反しない

内容:  件名 国籍確認等請求事件 (最高裁判所 平成10年(オ)第2190号 平成14年11月22日 第二小法廷判決 棄却)
 原審 大阪高等裁判所 (平成8年(ネ)第2013号)

主    文
        本件上告を棄却する。
       上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

第1 上告代理人雪田樹理,同越尾邦仁,同真継寛子,同寺沢勝子,同島尾恵理,同小山操子の上告理由のうち,国籍法(以下「法」という。)2条1号の憲法14条違反をいう部分について
1 本件は,法律上の婚姻関係のない日本国民である父とフィリピン国籍を有する母との間に出生した上告人が,出生の約2年9箇月余り後に父から認知されたことにより,出生の時にさかのぼって日本国籍を取得したと主張して,被上告人に対し,日本国籍を有することの確認及び日本国籍を有する者として扱われなかったことによる慰謝料の支払を求める事案である。
論旨は,原判決が法2条1号の適用において認知のそ及効を否定したのは,嫡出子と非嫡出子との間で,また,胎児認知された非嫡出子と出生後に認知された非嫡出子との間で,日本国籍の取得について不当な差別をするものであり,憲法14条に違反するというものである。
2 憲法10条は,「日本国民たる要件は,法律でこれを定める。」と規定している。これは,国籍は国家の構成員の資格であり,元来,何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは,国家の固有の権限に属するものであり,国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは,それぞれの国の歴史的事情,伝統,環境等の要因によって左右されるところが大きいところから,日本国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかを法律にゆだねる趣旨であると解される。このようにして定められた国籍の得喪に関する法律の要件における区別が,憲法14条1項に違反するかどうかは,その区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかによって判断すべきである。なぜなら,この規定は,法の下の平等を定めているが,絶対的平等を保障したものではなく,合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,法的取扱いにおける区別が合理的な根拠に基づくものである限り,何らこの規定に違反するものではないからである(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁平成3年(ク)第143号同7年7月5日大法廷決定・民集49巻7号1789頁)。
3 法2条1号は,日本国籍の生来的な取得についていわゆる父母両系血統主義を採用したものであるが,単なる人間の生物学的出自を示す血統を絶対視するものではなく,子の出生時に日本人の父又は母と法律上の親子関係があることをもって我が国と密接な関係があるとして国籍を付与しようとするものである。そして,生来的な国籍の取得はできる限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいところ,出生後に認知されるか否かは出生の時点では未確定であるから,法2条1号が,子が日本人の父から出生後に認知されたことにより出生時にさかのぼって法律上の父子関係が存在するものとは認めず,出生後の認知だけでは日本国籍の生来的な取得を認めないものとしていることには,合理的根拠があるというべきである。
以上によれば,法2条1号は憲法14条1項に違反するものではない。このように解すべきことは,前記大法廷の判例の趣旨に徴して明らかである。論旨は採用することができない。
第2 同上告理由のうち法3条の憲法14条違反をいう部分について
論旨は,嫡出子と非嫡出子との間で国籍の伝来的な取得の取扱いに差異を設ける法3条は憲法14条に違反するというものである。しかし,仮に法3条の規定の全部又は一部が違憲無効であるとしても,日本国籍の生来的な取得を主張する上告人の請求が基礎づけられるものではないから,論旨は,原判決の結論に影響しない事項についての違憲を主張するものにすぎず,採用することができない。
第3 その余の上告理由について
その余の上告理由は,違憲をいうが,その実質は単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官亀山継夫の補足意見,裁判官梶谷玄,同滝井繁男の補足意見がある。
裁判官亀山継夫の補足意見は,次のとおりである。
法3条の合憲性は原判決の結論に影響しないので,詳論は差し控えるが,私は,法2条1号が日本人の父から胎児認知された非嫡出子に国籍の生来的取得を認めていることとの対比において,法3条が認知に加えて「父母の婚姻」を国籍の伝来的取得の要件としたことの合理性には疑問を持っており,その点が結論に影響する事件においては,これを問題とせざるを得ないと考えるものである。
裁判官梶谷玄,同滝井繁男の補足意見は,次のとおりである。
法廷意見は,法3条が憲法14条に違反するという上告理由について,結論に影響しないものとして,憲法判断を示さなかったが,事柄の重要性にかんがみ,この点についての私たちの考えを明らかにしておきたい。
日本人を母とする非嫡出子は,法律上の母子関係が出生によって当然生ずるとされている結果,法2条1号によって当然日本国籍を取得するのに対し,同じ日本人を親としながら,日本人を父とする非嫡出子は,その父から胎児認知を受けた場合は別として,出生後認知を受けたというだけでは,法2条1号の要件はもとより,法3条の要件も満たさないので,日本国籍を取得することができないのである。
この点に関し,原判決は,法は,親子関係を通じて我が国と密接な結合関係が生ずる場合に国籍を付与するという基本的立場に立っているとした上,親子関係を通じて我が国と密接な結合関係が生ずるのは,子が日本国民の家族に包含されることによって日本社会の構成員になることによるものであるから,日本国民の嫡出子については,当該日本国民が父であるか母であるかを問わず,日本国籍を付与するのが適当であるが,非嫡出子の場合は,婚姻家族に属していない子であり,あらゆる場合に嫡出子と同様の実質的結合関係が生ずるとはいい難いという。そして,婚外の父子関係は,通常母子関係に比較して実質的な結合関係が希薄であり,また,父が胎児認知する場合と生後認知する場合とでは,一般的に実質的な父子関係の結合の度合いが異なるところ,法は,親子関係の差異に着目し,親子関係が希薄な場合の国籍取得について,段階的に一定の制約を設けたものと解することができ,このような法の基本的立場は,立法政策上合理性を欠くとはいえず,簡易帰化等の補完的な制度をも考慮すると,法が一部の非嫡出子について取扱いに区別を設けたことに合理的な根拠があるというのである。
しかしながら,私たちは,以上の立論に,法3条が父母の婚姻をも国籍取得の要件としたことの合理性を見いだすことは困難であると考える。
親子関係を通じて我が国と密接な関係を生ずるという場合に国籍を付与するという基本的立場を採るならば,そのことは合理性を持っていると考える。しかしながら,法は,そのような立場を国籍取得の要件を定める上で必ずしも貫徹していない。
確かに,子が婚姻家族に属しているということは,その親子関係を通じて我が国との密接な関係の存在をうかがわせる大きな要素とはいえる。しかしながら,今日,国際化が進み,価値観が多様化して家族の生活の態様も一様ではなく,それに応じて子供との関係も様々な変容を受けており,婚姻という外形を採ったかどうかということによってその緊密さを判断することは必ずしも現実には符合せず,親が婚姻しているかどうかによってその子が国籍を取得することができるかどうかに差異を設けることに格別の合理性を見いだすことは困難である。
しかも,その父母が婚姻関係にない場合でも,母が日本人であれば,その子は常に日本国籍を取得することを容認しているのであるから,法自身,婚姻という外形を,国籍取得の要件を考える上で必ずしも重要な意味を持つものではない,という立場を採っていると解される。そして,法2条1号によれば,日本人を父とする非嫡出子であっても,父から胎児認知を受ければ,一律に日本国籍を取得するのであって,そこでは親子の実質的結合関係は全く問題にされてはいない。さらに,父子関係と母子関係の実質に一般的に差異があるとしても,それは多分に従来の家庭において父親と母親の果たしてきた役割によることが多いのであって,本来的なものとみ得るかどうかは疑問であり,むしろ,今日,家庭における父親と母親の役割も変わりつつある中で,そのことは国籍取得の要件に差異を設ける合理的な根拠とはならないと考える。
他方,国籍の取得は,基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持つものであって,本来,日本人を親として生まれてきた子供は,等しく日本国籍を持つことを期待しているものというべきであり,その期待はできる限り満たされるべきである。特に,嫡出子と非嫡出子とで異なる扱いをすることの合理性に対する疑問が様々な形で高まっているのであって,両親がその後婚姻したかどうかといった自らの力によって決することのできないことによって差を設けるべきではない。既に,我が国が昭和54年に批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約24条や,平成6年に批准した児童の権利に関する条約2条にも,児童が出生によっていかなる差別も受けない,との趣旨の規定があることも看過してはならない。
また,我が国のように国籍の取得において血統主義を採る場合,一定の年齢に達するまでは,所定の手続の下に認知による伝来的な国籍取得を認めることによる実際上の不都合が大きいとは考えられず,これを認める立法例も少なくないのである。そして,国籍取得はできる限り確定的に決定されることが望ましいという浮動性防止の要請は,国籍取得の効果を過去にさかのぼらせない法3条においては,問題とならない。
これらのことを考え合わせれば,国籍は国家の構成員の資格を定めるものであり,国籍を取得させるかどうかについての要件を定めることは国家の固有の権限に属し,立法の広い裁量があることを肯定しても,法3条が準正を非嫡出子の国籍取得の要件とした部分は,日本人を父とする非嫡出子に限って,その両親が出生後婚姻をしない限り,帰化手続によらなければ日本国籍を取得することができないという非嫡出子の一部に対する差別をもたらすこととなるが,このような差別はその立法目的に照らし,十分な合理性を持つものというのは困難であり,憲法14条1項に反する疑いが極めて濃いと考える。
(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 福田 博 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷 玄 裁判官 滝井繁男)



判例 平成14年10月17日第一小法廷・判決
平成11(行ヒ)46 在留資格変更申請不許可処分取消請求事件

判例 H14.10.17 第一小法廷・判決 平成11(行ヒ)46 在留資格変更申請不許可処分取消請求事件(第56巻8号1823頁)

判示事項:
1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人と出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格
2 日本人と婚姻関係にある外国人につき出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えていないとされた事例

要旨:
1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人は,その活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えているとはいえない。
2 日本人と婚姻関係にある外国人が,本邦上陸後約1年3か月間の同居生活の後,約4年8か月間別居生活を続け,その間,婚姻関係修復に向けた実質的,実効的な交渉等はなく,独立して生計を営んでいたなど判示の事情の下においては,当該外国人の本邦における活動は日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,当該外国人は出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得(ママ)の要件を備えていない。

参照・法条:
  出入国管理及び難民認定法2条の2,出入国管理及び難民認定法別表第二

内容:
 件名  在留資格変更申請不許可処分取消請求事件 (最高裁判所 平成11(行ヒ)46 第一小法廷・判決 破棄自判)
 原審  H10.12.25 大阪高等裁判所 (平成8(行コ)60)



主    文
       原判決を破棄する。
       被上告人の控訴を棄却する。
       控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         

理    由

(前略)

被上告人は,同年4月12日,Aの協力を得て,上告人に対し,在留期間更新申請をしたが,上告人は,同年5月19日付けで,被上告人が同2年8月以降Aと別居状態にあったこと等から,法21条3項所定の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとして,これを不許可とした。
 (6) 被上告人は,平成6年6月2日,上告人に対し,出国準備を理由として,在留資格を「日本人の配偶者等」から「短期滞在」に変更する旨の在留資格変更申請をし,上告人は,同日,被上告人に対し,「短期滞在」の在留資格で在留期間を90日(在留期限は同年7月20日まで)とする在留資格変更許可処分をした。
 (7) 被上告人は,平成6年7月18日,上告人に対し,Aとの法律上の婚姻関係が継続していることを理由として,在留資格を「短期滞在」から「日本人の配偶者等」に変更する旨の本件申請をしたが,上告人は,同7年3月30日付けで,法20条3項所定の在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由がないとして,本件処分をした。

(中略)

 3 原審の上記判断のうち,(1)は是認することができるが,(2)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 法は,本邦に在留する外国人の在留資格は,法別表第一又は第二の上欄に掲げるとおりとした上,別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者は,当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる活動を行うことができ,別表第二の上欄の在留資格をもって在留する者は,当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動を行うことができるとし(2条の2第2項),また,入国審査官が行う上陸のための審査においては,外国人の申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく,別表第一の下欄に掲げる活動又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動のいずれかに該当することを審査すべきものとしている(7条1項2号)。これらによれば,法は,個々の外国人が本邦において行おうとする活動に着目し,一定の活動を行おうとする者のみに対してその活動内容に応じた在留資格を取得させ,本邦への上陸及び在留を認めることとしているのであり,外国人が「日本人の配偶者」の身分を有する者として別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには,単にその日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係にあるだけでは足りず,当該外国人が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要するものと解するのが相当である。
 (2) 日本人の配偶者の身分を有する者としての活動を行おうとする外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することができるものとされているのは,当該外国人が,日本人との間に,両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真しな意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者として本邦において活動しようとすることに基づくものと解される。ところで,婚姻関係が法律上存続している場合であっても,夫婦の一方又は双方が既に上記の意思を確定的に喪失するとともに,夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり,その回復の見込みが全くない状態に至ったときは,当該婚姻はもはや社会生活上の実質的基礎を失っているものというべきである(最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。そして,日本人の配偶者の身分を有する者としての活動を行おうとする外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することができるものとされている趣旨に照らせば,【要旨1】日本人との間に婚姻関係が法律上存続している外国人であっても,その婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている場合には,その者の活動は日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということはできないと解するのが相当である。そうすると,上記のような外国人は,「日本人の配偶者等」の
在留資格取得(ママ*)の要件を備えているということができない。なお,日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するかどうかを決するに際しては,婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っているかどうかの判断は客観的に行われるべきものであり,有責配偶者からの離婚請求が身分法秩序の観点から信義則上制約されることがあるとしても,そのことは上記判断を左右する事由にはなり得ないものというべきである。

(あてはめ中略)
他方,Aは,離婚意思を有し,本件処分当時,被上告人に対して婚姻関係を修復する意思のないことを告げ,ただ,被上告人の在留期間更新申請についてのみ婚姻関係の外観を装うことに協力するなどしていたというのである。これらの事情に照らすと,被上告人とAとの婚姻関係は,本件処分当時,夫婦としての共同生活の実体を欠き,その回復の見込みが全くない状態に至っており,社会生活上の実質的基礎を失っていたものというのが相当である。
 したがって,本件処分当時,被上告人の本邦における活動は日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,被上告人は,「日本人の配偶者等」の
在留資格取得(ママ*)の要件を備える者とは認められないというべきである。論旨のうちこの趣旨をいう点は理由がある。

 4 以上によれば,原審の上記2(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,その余の点につき判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。そして,以上によれば,被上告人の請求を棄却すべきものとした第1審判決は正当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 井嶋一友 裁判官 町田 顯 裁判官 深澤武久 裁判官 横尾和子)


[あさひ東京総合法務事務所の行政書士の注釈*]
 上記の最高裁の判文中の「在留資格取得」の用語の使用方法は、そもそも「在留資格の取得」とは、「日本の国籍を離脱した者又は出生その他の事由により前章に規定する上陸の手続を経ることなく本邦に在留することとなる外国人は、第二条の二第一項の規定にかかわらず、それぞれ日本の国籍を離脱した日又は出生その他当該事由が生じた日から六十日を限り、引き続き在留資格を有することなく本邦に在留することができる。」(入管法22条の2)、とする場合を指すのであって、本件のような事実関係のもとでは、法令用語として適切な使用方法ではなく、混乱を招く虞があると解されます。おそらく、「在留資格取得」が独自の法令用語だと調査官も気づかないまま出してしまったのでしょう。最高裁は入管専門ではないですから。なお、「ママ」は原文のママの意味の実務慣用句です。入管専門の行政書士の先生方は、「取得」と聞いただけでピンと反応するはずです。
 蛇足ですが、どう考えても、(個人の差はあれ)全体的に見ると、入管を一番知っているのは行政書士(入管専門に限る。)です。書士会としてもっとPRするべきです。刊行物もただの冊子ではなく、しっかりとした分厚い法律書(内容は入管専門の先生方の共著)を行政書士会の監修で、出版社から発行するなど取り組むべきでしょう。



H12. 6.28
東京高裁 平成11(行コ)263 裁決取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成11年(行ウ)第16号)

       主   文
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求める裁判
一 控訴人ら
 主文同旨
二 被控訴人
 本件控訴を棄却する。
第二 事案の概要
 次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 被控訴人の主張

(中略)

二 控訴人らの主張
1 在留特別許可の性質等
 外国人には憲法上も日本に在留する権利はなく、外国人に対する基本的人権の保障は、本来憲法の保障が及ばず、外国人存留制度のわく内(国の裁量によって与えられる在留という基盤の上)において与えられているにすぎない。適法に在留していた外国人に対する入管法二一条三項に基づく在留期間更新事由の有無の判断は法務大臣の広範な裁量に委ねられており、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠く場合に限り、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となる(最高裁判所昭和五三年一〇月四日大法廷判決・民集三二巻七号一二二三頁)。B規約二三条も法務大臣の裁量を拘束する根拠たり得ないし、法務大臣の判断を拘束する条理は存在しない。
 入管法五〇条一項三号所定の在留特別許可は在留期間更新の場合と異なり不法在留者等の退去強制事由に該当する者を対象としており、右許可の付与は法務大臣の極めて広範な自由裁量(在留期間更新の場合よりも広い自由裁量)に基づく恩恵的措置である(最高裁判所昭和三四年一一月一〇日第三小法廷判決・民集三巻一二号一四九三頁)。したがって、これを与えなかった法務大臣の判断が違法とされるのは、在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反するなどの極めて特別な事情(違法行為があって法律上当然に退去強制されるべき外国人について、右違法行為があってもなお本邦に在留することを認めなければならない積極的な理由)が認められる場合に限られる。このことは同号の規定が概括的であること、在留特別許可はその申請権が一切認められておらず、いわば請求権なき者に一方的に利益を付与するものあること、難民であっても当然に在留特別許可が付与されるのではなく難民であることは付与するか否かを判断する際の、事情にすぎないこと(同法六一条の二の八)からも明らかである。なお、同法四九条一項所定の異議の申出は法務大臣に退去強制事由に該当するか否かの最終判断を求めるものにすぎず、これによって在留特別許可の申請権があるとすることはできない。
2 本件裁決の違法性の存否等
 本件裁決に違法性は存しない。本件において裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)の立証はなく、外国人が日本人と婚姻した場合において、控訴人法務大臣が当該外国人の在留を認めるのを相当としない事情がある場合に当たることを立証しなければ同控訴人の判断が違法となるとすることは、実質的に立証責任を転換させるものであって最高裁判所昭和五五年一一月二五日判決(乙一九)に違背する。
 被控訴人は一〇年以上の長期にわたり不法在留(刑事判決で確定している。)し、不法就労という出入国管理上看過できない行為を行っていた者である。不法在留以外の犯罪を犯さずに生活していたとしてもそれを平穏な不法在留などと評価することはできないし、被控訴人に対する基本的人権の保障が在留許否決定の裁量を拘束するような範囲にまで及んでいるとすることはできない。また被控訴人の外国人登録法三条一項による新規登録義務違反は外国人の公正な管理を阻害する悪質なものである。
 憲法二四条は日本人と婚姻した外国人に対し我が国から退去を強制されないと
いう権利を保障すべき根拠となるものではなく、被控訴人とAの婚姻関係も成熟していたものとは評価できない。退去強制されるべき違法行為を基礎として築き上げられた夫婦関係が存しても、それに基づく生活はそもそも清算を余儀なくされる性質のものであり、右夫婦関係の存在のみをもって在留特別許可を与えなければならないとすることは前掲昭和五三年最高裁判所判決の趣旨に反する(なお最高裁判所昭和五四年一〇月二三日第三小法廷判決・訟務月報二六巻三号四六八頁)。
第三 証拠関係
 本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四 当裁判所の判断
一 被控訴人が昭和六三年四月三〇日に羽田空港に到着し、在留期間を一五日とする上陸許可を受けて我が国に上陸したこと、その後、在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請をすることなく右上陸許可の在留期限である同年五月一五日を超えて不法に在留したことは、いずれも当事者間に争いがない。
二 在留特別許可の性質等
1 憲法は外国人の日本への入国について何ら規定しておらず(憲法二二条一項は日本国内における居住・移転の自由を保障するにとどまる。)、このことは、国際慣習法上国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を受け入れるかどうか、受け入れる場合にいかなる条件を付するかを当該国家が自由に決定できるとされていることと考えを同じくするものと解される。したがって、憲法上、外国人は日本に入国する自由が保障されていないことはもとより、在留する権利ないし引き続き在留することを要求する権利を保障されているということはできない。また、右のように外国人の入国及び在留の許否は当該国家の自由な裁量に委ねられているのであるから、我が国に在留する外国人は、以下に述べるような入管法に基づく外国人在留制度の枠内でのみ憲法の基本的人権の保障が与えられているにすぎないものであると解される(最高裁判所大法廷昭和五三年一〇月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁、同昭和三二年六月一九日判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)。
 入管法は右憲法の趣旨を前提として(入管法二条の二、七条ほか)、外国人に対し、原則として一定の期間を限り特定の資格により我が国への上陸を許すものとしているのであるから、上陸を許された外国人はその在留期間が経過した場合は当然我が国から退去しなければならないことになる。そして同法二一条は当該外国人が在留期間の更新を申請できることとしているが、右申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」これを許可することができるものとされている。これらによると、同法においても在留期間の更新が当該外国人の権利として保障されているものでないことは明らかであり、法務大臣は更新事由の有無の判断につき広範な裁量権を有するというべきであって、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるのは全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠く場合に限られるというべきである(前掲昭和五三年最高裁判所判決)。
2 また、同法五〇条一項三号は、同法四九条一項所定の異議の申出を受理したときにおける同条三項所定の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも法務大臣は在留を特別に許可することができる旨定めている。
 これらの規定によると、法務大臣が異議の申出を棄却する裁決は、主任審査官の判定に対する異議を排斥する処分であるとともに、在留特別許可をすべき場合に当たらないとしてこれを付与しない(職権発動をしない。)処分としての性質をも有することになる。そして前記のように外国人には我が国における在留を要求する権利がないこと、右在留特別許可の対象となるのは(適法に在留している外国人に対する在留期間更新の場合と異なり)不法在留等により退去強制の対象となる外国人であること、同法五〇条一項三号は「特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」に在留を特別に許可することができるとだけ定め、右特別に許可すべき事情に係る法務大臣の判断を羈束する規定は何ら設けられていないことからすると、右許可を付与するか否かは法務大臣の自由裁量に属し(最高裁判所第三小法廷昭和三四年一一月一○月判決・民集一三巻一二号一四九三頁)、しかもその裁量権の範囲は在留期間更新許可の場合より更に広範であると解するのが相当である。したがって、右判断が違法とされるのは、法律上当然に退去強制されるべき外国人についてなお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由が認められるような場合に限られるというべきである(
以上のこと及び後記のとおり在留特別許可申請権があるとは解されないことからすると、在留特別許可の付与は、いわば請求権なき者に利益を一方的に与える措置であるということができる。)。
3 以上に関し、被控訴人は同法四九条一項が異議申出権を認めていることからしても不法在留者には在留特別許可申請権があると解すべきであり、在留特別許可の制度は日本人と婚姻した外国人等の在留につきその事実ゆえに保護されるべき利益を見出すものである等と主張する。
 しかし、前記憲法の趣旨、入管法四九条及び五〇条の各規定の文言と両条の関係からすると、我が国に不法在留する外国人に在留特別許可申請権があるとは到底解することはできず、また、当該外国人が日本人と婚姻しており、あるいは後記不法在留等以外の犯罪に該当する行為を何ら行っていなかったとしても、それらは在留特別許可の判断に当たって法的に保護されるべき事情であるとはいえず、せいぜい右判断に当たって有利に斟酌されるべき一事情にすぎないというべきである。右被控訴人の主張は外国人にも我が国に在留することができる権利があることを前提とするものであり、右前提自体が失当であるのみならず、実定法たる入管法の解釈としても採用できないというほかない。
そして不法在留が犯罪であることは明らかであり、不法在留の事実やこれについての有罪判決があること、あるいは不法就労や外国人登録法三条一項所定の新規登録義務違反の事実があることは、右判断に当たって当該外国人に在留特別許可を付与しない事情として斟酌されるのはむしろ当然というべきである。

三 本件裁決及び本件退令発付処分の違法性の存否

1 争いのない事実並びに証拠(甲一ないし一六、五九、六二、六九、八七、乙ないし一七(枝番のあるものはこれを含む。)、証人A及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(一) 被控訴人は、昭和三八年*月*日にバングラデシュで出生したバングラデシュ国籍を有する外国人である。
 被控訴人は、*工業の作業員の募集に応募して昭和六〇年八月にイラクへ赴き、一緒に仕事をしていた日本人から日本の話を聞いて興味を持つようになった。
(二) 被控訴人は、昭和六三年四月三〇日羽田空港に到着し、外国人入国記録の「日本滞在予定期間」及び「渡航目的」欄にそれぞれ「FOR 7DAYS(七日)」、「FOR TOUR(旅行のため)」と記載して上陸申請をし、右同日、東京入管羽田空港出張所入国審査官から、在留資格を旧入管法四条一項四号所定のもの、在留期間を一五日とする上陸許可を受け、本邦に上陸した。
 被控訴人は、その後在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請をすることなく、右上陸許可の在留期限である同年五月一五日を超えて本邦に不法に残留した。
(三) 被控訴人は、同年一一月から千葉県松戸市所在の*センターで稼働することになり、パートとして勤務していたA(昭和*年*月*日生)と知り合った。
 Aは、*というバングラデシュの人々を支援するNGO(非政府組織)に所属しており、一言だけであるが「こんにちは」という意味のベンガル語を知っていたので、仕事中に被控訴人に対して「アッサーラワライコム(こんにちは)」とベンガル語で話しかけ、これをきっかけに、その日のうちに被控訴人とAは友人になった。
 被控訴人は、*センターを二か月ほどで辞め、千葉県船橋市に一緒に住むことになった甥の紹介で平成元年二月ころから、同市馬込所在の*車体で溶接工として稼働し始めた。
 Aは既婚で、夫のCと当時*歳と*歳になる二人の息子とともに千葉県松戸市内に居住していたが、同月ころ、被控訴人を自宅に招待し家族ともども歓待した。以後、被控訴人はAの家族旅行に同行することもあって、Aと家族ぐるみでつき合っていたが、同年九月ころ被控訴人の具合が悪くなった際にAが被控訴人を看病したことから、被控訴人とAは二人きりでつき合いをするようになった。なお、Aは同年八月ころ、被控訴人から被控訴人がオーバーステイ状態であることを聞いた。
 同年一二月ころAが被控訴人の家へ行ったときに、被控訴人がAに恋人としてつき合ってほしいと告白したが、Aは、当時Cと婚姻していたことや被控訴人より年がずっと上であることから、友人としてならばつき合えるが恋人として交際するのは難しいと答えた。しかし、被控訴人はその後もあきらめずにAを口説き続け、Aは被控訴人の素朴で素直なところにひかれ、次第に被控訴人のことを単なる友人から恋人として意識するようになった。そして、平成二年二月ころCと子供がAを残してスキー旅行に出かけた際に、Aは被控訴人の家に泊まった。
 その約三か月後である同年五月一日に、AはCと協議離婚しその旨を届け出た。離婚の原因は、主に子供の教育方針の違いにあったが、被控訴人との交際も離婚原因の一つにあった。
(四) 被控訴人は、体を悪くしたこと等から、同年二月ころ、*車体での仕事を辞め、しばらく静養した後、東京、千葉等で日雇の作業員として稼働した。
 被控訴人とAは、同年一二月ころから千葉市花見川区β所在のアパートで同居するようになったが、被控訴人が定職に就いておらず、生活が安定していなかったこともあり、結婚は二人の生活が安定してからでもよいと考えて、婚姻届を提出しなかった。
 被控訴人は、平成三年九月ころから再び*車体に戻って稼働した。
(五) 平成四年一一月ころ、被控訴人の弟であるDが被控訴人を頼って来日し、被控訴人らと同居するようになり、被控訴人らが船橋市α(最寄り駅は馬込沢駅)に転居してからも同居を続けた。
 Dは、同年暮れころ船橋市内にある*建鉄に仕事が見つかり、会社の寮に住み込みで働くことになったが、日本語が話せない上に慣れない生活にストレスがたまりノイローゼ気味であったため、被控訴人はDを放っておくことができないとして、Dと一緒に*建鉄に入って仕事をすると言い出した。AはDのことが落ち着けば自分とのことはまた別に考えられるのではないかと思い、被控訴人と同居ができないことを我慢することにした。結局、被控訴人はDと共に*建鉄の寮で生活することになり、被控訴人とAの同居は解消された。
 被控訴人とAは、その後も、週末には被控訴人がAのところへ泊まりに行ったり、休日に二人で出かけることもあった。
 その後、被控訴人とDは、*建鉄から解雇され、平成八年ころから栃木県足利市所在の*工業所というところで働くようになった。被控訴人が足利市に移ってからは、被控訴人とAは月に二、三回くらいの割合で週末に会っていた。
(六) 同年暮れころ、Dは、不法残留者として東京入管当局に拘束され、退去強制令書の発付を受けて強制送還され、被控訴人も仕事を辞めてしまった。当時経済的に不安であったこと、Aは看護助手の仕事をしていたが足利には看護助手の求人がなかったこともあって、被控訴人とAはすぐには同居するに至らなかった。
 Aは、平成九年夏ころから、船橋市役所へ電話をかけたり実際に出向いたりして、被控訴人との婚姻の届出をするにはどのような手続が必要かを問い合わせるなどした。
 平成一〇年一月か二月ころ、被控訴人は栃木県足利市所在の*工業で稼働し始めた。
 被控訴人に安定した仕事が見つかったことから、被控訴人とAは、婚姻届出をして同居
するための準備を始めた。Aは同年三月、被控訴人とAの結婚に必要な宣誓口供書、出生登録認証抄本及び素行証明書をバングラデッシュから取り寄せた。なお右のうち、宣誓口供書及び素行証明書は同月一八日付けで、出生登録認証抄本は同月一九日付けでそれぞれバングラデシュにおいて発行されている。Aは、同年八月に足利市の披控訴人のもとへ行く準備を始め、同月二〇日には当時勤めていた船橋市内の病院に仕事を辞める旨の申出をした。
(七) 被控訴人は、平成一〇年八月二三日に群馬県太田市内で車を運転中に警察官の職務質問を受け、入管法違反容疑により群馬県太田警察署員に逮捕された。Aは、同月二四日に被控訴人が逮捕されたことを太田警察署からの連絡で知り、直ちに被控訴人に会いに太田警察署に行った。
 被控訴人は、同年九月二日、入管法違反(不法残留)事件により前橋地方裁判所太田支部に起訴され、同年一○月二七日、同支部において入管法違反(不法残留)により懲役二年、執行猶予三年とする判決の宣告を受け、右判決は同年一一月一一日確定した。Aは被控訴人の裁判において、証人として被控訴人との交際の経過等について証言をした。
 Aは右起訴後、右判決前の間の同年九月一六日、船橋市長に対し被控訴人との婚姻届を提出した。同届出は受理伺とされ、同年一一月二五日ころ受理が決定し、右届出の日付で受理された。
(八) 東京入管入国警備官は、被控訴人について、同年八月二五日、同日付けの前橋地方検察庁太田支部からの通報に基づき入管法二四条四号口該当容疑者として違反調査に着手した。同入国警備官は違反調査を行った結果、被控訴人が入管法二四条四号ロに該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、同年一○月二六日、東京入管主任審査官から収容令書の発付を受け、同月二七日、太田拘置支所において右収容令書を執行し、右同日、被控訴人を東京入管収容場に収容した。東京入管入国警備官は、同月二八日、被控訴人を入管法二四条四号口該当容疑者として東京入管入国審査官に引き渡した。
 被控訴人が東京入管収容場に収容されている間、Aは週に一、二回の割合で被控訴人に面会に行った。
 東京入管入国審査官は同年一二月二日、審査の結果被控訴人が入管法二四条四号ロに該当する旨の認定を行い、被控訴人にこれを通知したところ、被控訴人は右同日口頭審理を請求した。
(中略)
 東京入管主任審査官は同月一四日、Aからの申請に基づき、仮放免保証金を一〇〇万円、千葉県船橋市*を指定住居として、被控訴人の仮放免を許可した。
(九) 被控訴人が仮放免されてから、被控訴人とAは船橋市*所在のAの住所において生活を始めた。
 平成一一年になってしばらくたったころ、被控訴人は船橋市所在の*製作所に溶接工として採用された。
 しかし、控訴人法務大臣は平成一○年一二月二四日、被控訴人の異議の申出は理由がない旨の裁決(本件裁決)をし、本件裁決の通知を受けた控訴人東京入管主任審査官は、平成一一年一月一八日、仮放免の際に出頭するように指定された期日に出頭した被控訴人に対して本件裁決を告知するとともに、退去強制令書(本件退令)を発付した。そこで東京入管入国警備官は右同日これを執行し、被控訴人を東京入管収容場に収容した。
 東京入管入国警備官は同年二月三日、被控訴人の身柄を東日本センターに移収したが、Aは週に一回の割合で被控訴人のいる東日本センターに面会に行っていた。
(一〇) 被控訴人は同月二九日に本件訴訟を提起し、その請求を認容する原判決が言い渡された同年一一月一二日に仮放免され、その後Aと同居し、就労している。

2 右認定の事実によると、控訴人法務大臣の本件裁決及び同東京入管主任審査官の本件退令発付処分はいずれも入管法の定めに従って行われたものであるということができる。

 そして前記のように控訴人法務大臣は在留特別許可を付与するか否かにつき極めて広範な裁量権を有しており、本件裁決が違法であるというためには、上陸許可の在留期限を超えて我が国に不法に在留している被控訴人についてなお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由が存することが必要であるところ、前記認定の事実によると、被控訴人の不法在留は昭和六三年五月一六日以降本件裁決に至るまで一〇年以上にわたっており、Aとの関係は特に深い仲になったとみられる平成二年二月ころから終始交際が続いていたと認められるものの、婚姻の届出がされたのは平成一〇年九月で、被控訴人が起訴され判決を前にした時期であり、同居期間は同年一二月仮放免を許可された後のものを除くと平成二年一二月から約二年間にすぎないのであって、これらの点について前記認定のような事情があったことを考慮しても、
本件事実関係の下において被控訴人に対し在留を認めなければならない積極的な理由があるというのは困難であるといわなければならない。そうすると、本件裁決は適法である。
 また、被控訴人東京入管主任審査官は同法務大臣が被控訴人のした異議の申出を理由がないとする本件裁決をした以上、これに従って本件退令を発付する以外に何らの権限を与えられていないことは明らかであるところ、前記のように本件裁決が適法である以上、本件退令発付処分が違法となる余地は存しない。
3 控訴人は、本件裁決の違法性判断の中心問題は被控訴人とAとの婚姻の事実やその実態である等と主張する。
 しかし、
被控訴人とAの婚姻が真意に基づくもので夫婦の実態が十分に備わっているとしても、それは不法在留という違法状態の上に築かれたものであってそもそも法的保護に値しないものである(最高裁判所第三小法廷昭和五四年一○月二三日判決・裁判集民事一二八号一七頁、訟務月報二六巻三号四六八頁)し、在留特別許可を付与するか否かの判断に当たっての一事情にすぎないというべきであり、右婚姻等の事実の存在をもって直ちに本件裁決が控訴人法務大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用によるものであるとすることはできないことは明らかである。また、前記のように外国人については外国人在留制度の枠内においてのみ憲法に規定される基本的人権の保障が及ぶにすぎないから、右のように解したとしても憲法二四条等に抵触するものではなく、右被控訴人の主張は採用できない。
4 被控訴人は、本件裁決はB規約十七条等に違反し、条理にも反する等と主張する。
 しかし、外国人の恣意的追放の禁止を定めた同規約一三条は、「合法的に」同規約締結国の領域内にいる外国人は、「法律に基づいて行われた決定によってのみ」当該領域から追放できる旨を規定しているところ、被控訴人は不法在留をしている者であって合法的に我が国の領域内にいるものではないのみならず、本件裁決は法律に基づいて行われた決定であるから、同規約一七条、二三条等の適用の前提がないことは明らかである。また、このような外国人である被控訴人に対し、在留特別許可を付与すべき条理が存在す
るとすべき根拠は見出せず、被控訴人の右主張は失当である。
 右の各規定の趣旨からすれば、日本人と婚姻し夫婦の実体を形成している外国人につき控訴人法務大臣が在留特別許可を与えるか否かについて前記のような広範な裁量権を行使するに当たって、一つの事情として婚姻の実態を斟酌することはあり得ることではあるが
、夫婦関係の維持、継続の保護が主要な要請であり中心的な問題であるということはできない。
5 被控訴人は、以上のような解釈は在留特別許可に関するいわゆる専決通達や実務に反する等と主張する。
 しかし、右通達は行政庁たる控訴人法務大臣の処分の妥当性を確保するためのものにすぎず、処分が右通達に違背して行われたとしても、そのことは原則として処分の当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない(前掲昭和五三年最高裁判所判決参照)。そして控訴人法務大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があった場合には違法の問題を生ずるが、前記のように在留特別許可に関する控訴人法務大臣の裁量権は極めて広範なものであり、本件裁決については前に例示したような裁量権の逸脱又は濫用の場合に該当するとすべき事情は存しない。また、本件裁決が実務(ほかの多数の事案において在留特別許可が付与されているとの運用の実情)に反するものであるとしても、右裁量権の本質が実務によって変更されるものでないことはいうまでもなく(なお右運用実情についても原則として当不当の問題を生ずるにすぎず、これが違法とされるのは例外的場合に限られる。)、右主張はいずれも採用できない。
第五 結論
 よって、被控訴人の請求はいずれも理由がなく、これを認容した原判決は不当であるからこれを取り消して被控訴人の請求を棄却することし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条二項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(平成一二年四月一七日口頭弁論終結)
東京高等裁判所第一七民事部
裁判長裁判官 新村正人
裁判官 笠井勝彦
裁判官 田川直之

[評釈]
日本人配偶者の事案でありながら完全に否定された裁判例です。いわゆる中村法務大臣大量不許可事件のときのもので、結局、行政の判断で、ほとんど自由にできるということになります。判文に現れない個別の事情はあったとは思いますが、この事例では、司法はほとんど機能していません。特に、「被控訴人とAの婚姻が真意に基づくもので夫婦の実態が十分に備わっているとしても、それは不法在留という違法状態の上に築かれたものであってそもそも法的保護に値しない」の部分は言いすぎではないか、と感じさせるほどのものです。法的保護といっても一義的ではないわけで、およそ法的保護の余地がないとは解されないのがむしろ普通のはずです。
ともかく、こうなりますと、裁判に期待して入管で手を抜くのは無謀であり、できる限り、行政である入管で終結させること考えざるを得ません。




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